研究概要 |
ゼオライトを各種の化学反応に利用する場合、反応物質が最初にゼオライトに接する場所は結晶の外表面であり、また、空隙で起きると理解されている反応でさえそのKineticsに表面の状態が大きく影響を与えていると推察される.また,ゼオライトの外表面に金属クラスターを様々な手法で分散・保持させて、ある種の反応に特別な触媒機能を付与する試みがなされている.従って、結晶表面の構造を明らかにすることは、結晶成長過程での構造単位を理解する上ばかりでなく、各種化学反応が生起する場所の理解とその態様を推論する上でも、更に、表面に作製する金属クラスターの担体としての構造の解明としても重要になっていると言える. 結晶表面の構造は高分解能電子顕微鏡(HERM)によるプロファイル像(電子線を結晶表面に平行に入射させて得られる像)から直接得られる.問題はゼオライトが電子線照射を受けると簡単に構造が壊れることである. ところで、ゼオライト結晶の構造を記述する上で、TO4四面体の一次構造単位、二重六員環などの二次構造単位が用いられる事が多い.これらは構造の説明に都合の良い単位であるが、結晶成長の最小単位として実際に意味を持つのだろうか. LTL型ゼオライトは、空間群:P6/mmm,格子定数:a=1.84nm,c=0.75nmの骨格構造を有している.この構造を二次構造単位で記述するとカンクリナイト・ケージが二重六員環(D6R)を通じて結合していることになる. LTL粉末をHREM観察用の試料とし、観察には1250kVおよび400kVの電顕を用いた.結晶の外表面、すなわち円筒の上下面は(001)面に、円筒の側面は{100}面、{110}面およびステップによって囲まれていることが判明した.これらの3種類の結晶表面について、観察した像と幾種類かの表面構造のモデルに基づいて計算した像との比較を行った.その結果,LTL結晶の表面構造は、(001)面では2重6員環、側面はカンクリナイト・ケージで終端していると結論される.
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