研究概要 |
Rh錯体触媒を用いるメタノールへのCO挿入反応による酢酸合成法(モンサント法)に対して,Ru(II)-Sn(II)ヘテロバイメタリック触媒を用い,メタノールのみを原料として一段で酢酸(または酢酸メチル)を生成させる反応が可能である。NaY型ゼオライトを[Ru(NH_3)_6]^<3+>でイオン交換後,SnCl_2・2H_2O-NaClのメタノール溶液で処理する従来の触媒調製法に対して,本研究では,Sn(II)成分を予めゼオライト細孔内に導入する方法を検討した。SnCl_2はアセトニトリル溶液中で[Sn(MeCN)_n]^<2+>カチオンを生成することが知られているため,このカチオンによるNaY型ゼオライトのイオン交換を試みたところ,Sn^<2+>導入量に見合う量のNa^+の減少がみられた。従って,Sn(II)成分はイオン交換的に導入されたと考えられる。なお,15-Crown-5を共存させることにより,Sn(II)担持量は増加した。このようにして得られたSn/NaYをRuCl_3・3H_2Oのアセトニトリル溶液で処理することにより,Ru-Sn/NaYバイメタリック触媒を調製した。これを触媒として200℃で反応を行ったところ,約15%の定常転化率で酢酸メチルが生成した。本触媒は従来法による触媒に比べ,酢酸メチル生成の誘導期が数10時間から約6時間に短縮されており,予めSn(II)成分をゼオライト細孔内に導入することによりRu(II)-Sn(II)クラスター種が効率よく生成したものと考えられる。種々の調製条件で得た触媒の活性を比較したところ,Ruの仕込量が多く,Ruによる処理温度が高いほどRu含有量は増加し,活性も高かった。また,[Sn]/[Ru]比の大きい触媒ほど有利であった。Ruへの平均的なSu配位数が大きい,あるいはSnの配位したRu種が多く存在する効果と考えられる。
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