研究概要 |
ナノメートルサイズのメソ多孔体空間が,有機反応の反応場として有用であることを明らかにするために,炭素-炭素結合形成環化反応の一つであるDiels-Alder反応に焦点を当てて,この反応を効率よく,しかも高選択的に促進するメソ空間反応場触媒を開発することを目指した. まず,固体酸性を示すメソ空間反応場触媒(Zn^<2+>-Al-MCM-41)は,コロイダルシリカ,アルミン酸ナトリウムおよびセチルアンモニウム塩からハニカム骨格アルミノシリケートをつくり,更に亜鉛イオンを導入して調製した.モデルDiels-Alder反応として,反応性が比較的低く,副反応であるジエン,ジエノフィル自身の重合反応が起こりやすい,シクロペンタジエンとアクリル酸メチルの組合せを選んだ.均一系ルイス酸であるBF_3・OET_2を用いると,生成物の立体選択性は高いものの,副反応の重合反応が優先し,Diels-Alder付加物の収率は低かった.これに対して,本研究で開発したZn^<2+>-Al-MCM-41触媒は,反応速度が速く且つDiels-Alder付加物の収率が高く,重合副生物が少なく,更に立体選択性も高いという理想的な触媒性能を示すことがわかった.さらに,ハニカム状シリカ骨格中に固体酸性発現の要因となるアルミニウムを高分散でしかも高濃度で組み込むことを考えて,ゾル-ゲル法によって調製したハニカム構造アルミノシリケート(Al-HMS)は,Zn^<2+>-Al-MCM-41よりも更にDiels-Alder反応触媒活性が高いことを見いだした.この触媒を用いると,アクリル酸メチルより更に反応性の低いメタクリル酸メチルのDiels-Alder反応にも,有効であることもわかった. ハニカム構造のアルミノシリケートがDiels-Alder反応用触媒として優れている理由は,細孔径が約30オングストロームと大きく,反応基質が細孔内を自由に拡散できること,アルミニウムが高濃度でシリカ表面上に分散していること,および細孔空間が生み出す極性環境により,極性を帯びたDiels-Alder反応遷移状態が安定化されること,などの相乗効果であると考えられる.
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