研究概要 |
1.超臨界二酸化炭素を各種の触媒反応に広く応用するための基礎的な検討は未だ不十分な状況にある。本研究では超臨界二酸化炭素の溶媒特性の利用と、対酸化安全性の両者に観点をおき、炭化水素類の酸素酸化反応について検討を進めた。 2.超臨界二酸化炭素中の触媒自動酸化反応-超臨界二酸化炭素にシクロヘキサンを溶解し、コバルト塩触媒を用い、酸素加圧下で触媒自動酸化反応が進行することを明らかにした。反応は触媒添加量の1次に比例し、活性化エネルギーや圧力依存性を明らかにした。 3.還元的触媒酸素酸化反応-臨界点に近い比較的低温下で反応を進行させる可能性を求め、金属ポルフィリン系触媒と還元剤を共存させた還元的な酸素酸化反応を検討した。Fe(III)(5,10,15,20-tetrakis(pentafluoro-phenyl)porphyrin)Clを触媒として、また還元剤としてアセトアルデヒドを用いてシクロヘキサンの酸素酸化反応を検討した。標準的な反応条件は、シクロヘキサンと酸素それぞれを1x10^<-3>mol、アセトアルデヒド2.5x10^<-4>mol、Fe触媒5x10^<-7>molを適当な圧力の二酸化炭素中に溶解し、305から343Kの温度範囲である。反応は加圧下の二酸化炭素中で有利に進行することが見いだされた。343K、9MPa下で反応時間1hでシクロヘキサノールとシクロヘキサノンの合計収率は5%に達し、触媒当たりのターンオーバー数は100に達した。なお、概算の活性化エネルギーは28kJmol^<-1>であった。さらに収率が圧力のある値で極大に達することを見いだした。以上より、反応機構の詳細と、超臨界二酸化炭素の溶媒特性との関係を考察した。さらに還元的酸素酸化反応では不可欠の還元剤として、光を用いる可能性を求め、金属ポルフィリン触媒を用いる光触媒反応へと展開した。
|