研究概要 |
本研究は、人間機械系の協調を実現するために人間とロボット、並びにロボット同士で共有できる感覚と行動情報を生成・獲得し、非明示的な意志の疎通を図る機構の構成に関するものである。本年度は、ロボットの行動系として、同期・引き込み行動、ヒステリシス的な行動、強化学習による確率的探索行動の他、シナップス学習に遺伝探索的アルゴリズムを組み込んだ進化的学習行動をとりあげ、これらをニューラルネットワーク等による非線形情報処理形を構成する手法の開発、及び小型移動ロボットによる実験による検証を行い、以下の成果を得た。 1.人間の感覚と行動情報を観測から得る方法の基礎として,指先脈波などの生体リズム信号を時間シフト座標系にアトラクタをもつダイナミクスとして再構築し,判別したいリファレンスとなるあらかじめ獲得し再構築したダイナミクスとカップリングした結果を解析することにより,分類,同定が可能となる理論および手法を確立し,人間感覚の機械への伝達に関して展望を開いた. 2.複数のエージェントロボットの行動を協調させるタスクでは、従来の強化学習の手法では収束が極めて遅い、また耐外乱の頑強性が非常に小さいなどの限界があった。そこで、複数のロボット同士が、お互いの行動がもつリズミックな性質を同定・予測し、それに基づいて最適行動をとらせる拡張型の強化学習法を新規に開発し、学習の収束性が著しく向上することを示した。またロボット集団が相互に譲り合いを行わなければ解決できないような集団作業において,提案した学習法をもつロボット群が互いにダイナミクスの生成と獲得を同時に行うことで,同期した協調行動をとることができることを示した. 3.人間の多様性に対応する多様性をロボットに獲得させる手法として進化的手法を取り入れた行動ネットワークの設計を行い,視覚センサ情報を環境に合わせて適応的に統合する応用に適用して,小型移動ロボットでのオンライン進化の実験により効果を確認した.これにより未知の人間環境下に出会った時に備えた行動形態をとれ、さらにそれを継承できる知能システムの構成についての展望を得た。
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