研究概要 |
本研究では、原子炉内のメンテナンス,廃棄物処理施設での作業,電力線・通信線のメンテナンスやビルの外壁補修のための高所作業や宇宙ステーション日本モジュールにおけるマニピュレータ作業など,ごく近い将来にロボットが社会的に貢献すべき分野を想定し,このような具体的なアプリケーションにおいて,作業対象との接触をともなう力・インピーダンス制御時の作業における技量を力学的に解明することを目的とする. 上に例示したアプリケーションにおいては,作業用高精度マニピュレータシステムを支持するベースの力学的条件により,マニピュレータが実現しうるスキルが低下してしまうという問題に直面する.また,関節部に機構的なコンプライアンスを積極的に導入することにより柔らかさを実現し,人間と共存する環境でマニピュレータシステムを使用する方向性が検討されているが,柔らかさの導入は同時にスキルの低下をもたらす. 本研究では,上記の問題を包括的に取り扱うことのできる力学的定式化をおこなった.ここで考える一般化システムは,ロボットベースが一般的なバネーダンパ系(拘束インピーダンス)によって拘束され,関節では機構的な柔らかさである(関節インピーダンス)と,制御による柔らかさの(制御インピーダンス)が存在する.また,手先作業においても一般的なバネーダンパ系(作業インピーダンス)として定式化される. このような力学状態におけるロボットマニピュレータの力学関係を解析するシュミレーションプログラムをMatlab言語を用いて開発した.さらに平面運動に動作を限定した検証実験を行うため,能動3自由度,受動コンプライアンス5自由度を持つテストベッドも開発した. これらの道具立てにより,受動コンプライアンスをもつシステムの制御限界および,安定なインピーダンス作業を行うための制御方式について基礎的な検討を行い,安定化制御の方式を明らかにした.
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