研究概要 |
今後の光通信や光情報処理技術の開発においては有機材料やポリマーを積極的に利用した低コストシステムによる光波マニュピレーションが重要になることから,本年度は,「旋光性ポリマーによるモード制御型光導波デバイスの開発」について主に研究した.これまでの研究でポリメンチルメタクリル酸(PMtMA)が青色波長域で大きな旋光能(19deg./cm)と低伝搬損失(0.2dB/cm以下)および非複屈折性を有し,これをコア層,基板に低屈折ポリマーを用いる3層スラブ型導波路を作成すると,変換効率70%を越すTEo-TMoモード変換が理論的,実験的に得られることを示したが,今年度はこのモード変換動作を制御するタイプの光スイッチや光アイソレータの開発を試みた.すなわち,ポーリングしたPVDF/PMMAをクラッド層としたときの電気光学効果で微少複屈折を制御するとモード変換効率が大きく変化し,これまでにない構造の簡単な光スイッチになることを実験的に示した. また,光学活性のメンチルメタクリル酸(MtMA)と反磁性磁気光学材料のベンジルメタクリル酸(BzMA)の1:1ランダム共重合ポリマーPoly(MtMA/BzMA)を合成し,これをコア層に用いるこれまでにない薄膜導波路型光アイソレータを実現した.波長441.6nmとしたときの理論的検討によると,この素子では膜厚4.5μmのとき自然複屈折による位相整合モード変換動作が得られ,これに約18kOeの外部磁界を印加して実効的旋光能をキャンセルするようにすると光アイソレータとなる.その実験的検討を行った結果,上記条件の素子で約15dBのアイソレーションが得られることを初めて明らかにした.以上の成果は国際会議,国内学術講演会,論文誌等に発表された.
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