研究概要 |
本年度は、C_<60>と様々なアミンが作る電荷移動錯体の光学スペクトルと非線形感受率を測定し、超分極率の評価を行い、この系における非線形性の増大のメカニズムについて考察した。主な結果は以下のとおりである。 1.C_<60>とイオン化ポテンシャル(I.P.)の異なる様々なアミン(アニリン(ANI;I.P.=7.7eV),N,N-ジメチルアニリン(DMA;I.P.=7.leV),N,N-ジエチルアニリン(DEA;I.P=7.0eV),N,N,N',N'-テトラメチル1,4フェニレンジアミン(TMPD;I.P.=6.2eV))が溶液中で作る電荷移動錯体の吸収スペクトルを測定した。それぞれの電荷移動吸収帯のピーク位置はイオン化ポテンシャルの増大とともに、高エネルギー側に移動した。 2.電荷移動遷移の振動子強度を吸収スペクトルの解析により求めたところ、イオン化ポテンシャルが大きなものほど大きな振動子強度を持つことが分かった。一番大きなC_<60>-ANIではその値は、0.73となった。 3.縮退四光波混合法により、それぞれの電荷移動錯体の3次の非線型感受率χ^<(3)>を測定した。χ^<(3)>は電荷移動吸収帯に共鳴して増大した。 χ^<(3)>から電荷移動錯体の超分極率を求めたところ、イオン化ポテンシャルの大きなドナーが作る電荷移動錯体ほど大きな超分極率を持つことが分かった。一番大きな値を持つC_<60>-ANIでは5.2×10^<-28>esuになった。この値は、C_<60>分子のそれと比べて、2桁程度増大している。 5.振動子強度と超分極率のイオン化ポテンシャルに対する変化が同じ依存性を持つことから、電荷移動錯体の超分極率の増大は、振動子強度の増大が原因であることがわかった。 6.種々の有機共役電子系について、光学スペクトルや非線形感受率を理論計算から求め、その励起子やソリトン、ホ-ラロンの効果を明らかにした。
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