研究概要 |
比較的大きな三次の非線形感受率(χ^<(3)>)を持つポリシラン誘導体を材料として,色素をドープした微粒子を作製し,そのレーザー発振特性を調べて,これまで研究を行ってきたPMMA微粒子と比較した。 ポリシラン誘導体の一種のポリシクロヘキシルメチルシランにロ-ダミンBをドープした微粒子では,ポンプ光強度を増加するとレーザー発振ピークが短波長側にシフトする現象が観測された。このようなシフトはPMMA微粒子では全く観測されなかった。このシフトの原因としては熱的な効果などは考えにくく,非線形光学効果による屈折率の変化が原因だと推測した。そこで,ポリシクロヘキシルメチルシランのχ^<(3)>を縮退四光波混合により計測したところ,その値はPMMAに比べて1桁以上大きく,ポリシクロヘキシルメチルシランで観測されたシフトは,三次の非線形光学効果(光カー効果)による屈折率変化が原因だと結論した。 この光カー効果を誘起するものとしては,ポンプ光とレーザー発振光の二つの可能性が考えられる。これを明らかにするためにシフト量の色素濃度依存性を検討した。その結果,ロ-ダミン濃度が高い微粒子ほどシフト量が大きいことが観測された。ロ-ダミン濃度が高い微粒子ほどレーザー発振の強度が強いことを考えると,光カー効果を誘起しているのはレーザー発振光だと考えられる。シフト量とχ^<(3)>の値から光カー効果を誘起するレーザー発振光の光電場の強度を見積もったところ,ポンプ光より30倍以上大きい値であることが明らかとなった。これは,微粒子の内部の表面近傍で,形態依存共鳴によりレーザー発振光が極めて効率的に増強されていることを示唆している。
|