研究概要 |
パルサー(強く磁化した、高速に回転する中性子星)磁気圏における粒子の加速機構をガンマ線X線の最近の観測結果と総合して明らかにしてゆくことが、本研究の目的であった。磁気圏電場による粒子加速と電子陽電子を含む相対論的な電磁流体加速の2点に分けて成果を報告する。 (1)磁気圏放射については、ミリ秒パルサーからのX線パルスの発見が重要な情報をあたえてくれた。従来の、磁局付近の加速(Polar Cap Acceleration)と光円柱近傍の加速(Outer Gap)の両面に渡って研究を行なった。Polar Capモデルでは、電流密度の広い範囲を研究し、従来の説を覆して磁場の幾何的な構造によらず、ある特性電流密度を越えさえすれば強い沿磁力線電場が発生することを証明した(Shibata,1997)。さらに、電子陽電子対が生成しても容易くその電場がシールドされないことを示した。(Shibata,Miyazaki & Takahara,1998 in press) Outer gapモデルでは従来、加速電圧は「ありき」として電圧は仮定されていた。そこで、電子陽電子対の生成過程と電圧発生を決めるPoisson-Maxwellの式を連立して理論的に加速電圧を求めた。その結果によると、光子-光子-衝突による電子陽電子対が起こりやすい若いパルサーでは高い電圧の加速がX線られないことがわかった(Hitotani & Shibata 1998)。標的となるX線が多すぎるためである。今後、このモデルを発展させ観測と比較したい。 (2)パルサー磁気圏で相対論的なエネルギーまで加速されたプラズマ(パルサー風)は星間空間で衝撃波を形成しそれがシンクロトロン星雲として観測される。この現象をモデル化し、観測データと突き合わせることで、パルサー風の粒子のローレンツ因子、磁化率、そして星雲の磁場を計測するスキームを確立した(Shibata,Kawai & Tamura 1998)。X線天文衛星あすかによるデータに適用すると、ローレンツ印紙として10∧7以上、磁化率は1/1000であることがわかった。次の段階では、超新星残骸とパルサー風の関連、逆コンンプトン効果のTeVガンマ線に関する解析を行ないたい。 最後に、経費について述べる。実際に衛星データの解析などを行なうと装置(計算システム)の維持、運用に予想う以上の経費とマンパワーが要ることがわかった。この点で補助金類がかなり不足する結果になってしまった。
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