研究概要 |
本研究は液体金属イオン源から放出されるクラスターイオン質量分析法により調べることにより,クラスター内の微視的な原子間結合とクラスター生成・分裂機構の関連を解明することを目的とする。本年度は,アルカリ金属同士の合金(Li-Na)およびアルカリおよびアルカリ土類金属の合金(Li-Mg)に関して以下の成果が得られた。 1.Li-Na合金クラスター Li-Na液体合金は,バルクにおいては相分離かhomocoordinationの傾向を示すが,Li-Na合金LMISから放出されたクラスターには種々のheteronuclearクラスターLi_xNa_y^+が豊富に含まれていた。その組成は,単純な統計的確率から期待されるものに比べ,(1)Li側に濃度が偏っていること,および(2)heteronuclearクラスターの生成が好まれていることが分かった。また,アバンダンススペクトルにおいて,LiNa_6^+で顕著な極大が観察された。これは,擬ポテンシャルを使ったNa_k+Li+ΔH=LiNa_<k-1>+Naにおける置換エンタルピーΔHの計算において,LINA_6で負値の極小(絶対値では極大)が現れることと対応している。このLiNa_6で初めて,Liがクラスターの中心に位置し,その周りにNaが6個配置した殻構造を持つと推測されている。これより小さいLiNa_<k-1>では幾何学的殻構造はできていない。 2.Li-Mg合金クラスター 一価にイオン化した単体クラスターLi_n^+(n≦9),Mg_n^+(n≦4)および異核クラスターMg_mLi_n^+(m,n≦2)の他に,二価にイオン化した二量体および三量体Mgクラスターが観察された。これらの二価にイオン化したクラスターMg_n^<2+>(n=2,3)は,ポテンシャル曲線上の極小にトラップされた準安定クラスターと考えられる。
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