研究概要 |
昨年に引き続き,コンダクタンスを指標とする金属のナノワイヤーの変形挙動に関する研究を継続して行った.これまでの研究により,Auナノワイヤーが示すコンダクタンスのプラトーや,ヒストグラムにおいてG0(=2e^2/h)の整数倍付近に現れるピークは,単純なコンダクタンスの量子化ではなく,むしろAuナノワイヤーの延性(軟らかさ)に関係した現象であることが示唆されている.そこでAu以外の軟らかい金属の代表としてInを取り上げ,mまた逆に硬い金属としてRhとRuを取り上げてナノワイヤーの変形実験を行った.In接点の場合には,Auの場合と同様に接点の破断時にコンダクタンスプラトーが現れる.Auのプラトーよりも長いプラトーも多く観測され,Inが非常に引き伸ばされてから接点が破断することが推察される.またAuの場合と同様にヒストグラムにピークが現れるが,ピークはG0の整数倍には一致せず,約1.3G0に位置しており,Auとは異なっている.しかしピークの電圧依存性はAuと異ならず,電圧が増加するにつれてピークの位置はシフトせずにピークの高さのみが減少してゆく.Auにおける1G0ピークとInにおける1.3G0ピークの電圧依存性が共通していることは,このようなピークの成因がコンダクタンスがnG0に一致しているかどうかには無関係であり,むしろナノワイヤーの延性(軟らかさ)に関係しているとする考えに良く合致している.一方RhとRu接点では,ヒストグラムに明瞭なピークは見られず,幅の広いピークが現れるのみである.このピークの位置がバイアス電圧によってシフトすることから,RhとRu接点のコンダクタンスピークは何らかの接点の電子状態に対応していると考えられる.
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