研究概要 |
我々は平成8年度の本重点領域研究の公募研究の成果から、パルスラジオリシス法およびγ線ラジオリシス法によってのアニシルアルカンのラジカルカチオンではC-H結合開裂反応が起こること、この反応が77Kマトリックスの昇温(<100K)でも起こることを見出し、トンネル反応の可能性が示唆された。そこで平成9年度は、室温から77Kの温度領域でこのC-H結合開裂反応速度定数を測定し、反応速度の温度効果を明らかにする。また、開裂する水素を重水素化したアニシルアルカンを合成しC-D結合開裂反応速度定数の重水素効果を明らかにする。この結果から、この反応におけるトンネル反応についての結論を得る。ジアニシルメタンのラジカルカチオンではC-H結合開裂反応が起こり、ジアニシルメチルラジカルとジアニシルメチルカチオンが生成する。このC-H結合開裂反応の反応機構の詳細を、阪大産研のLバンドライナックからのナノ秒電子線パルスラジオリシスおよびコバルト60-γ線照射により明らかにした。また、このC-H結合開裂反応速度定数の室温から150Kの温度領域での反応速度定数の温度効果や、C-H結合の重水素効果を調べ、ジアニシルメタンのラジカルカチオンのC-H結合開裂反応におけるトンネル効果について議論した。さらに、1,1-ジアニシルエタン、ο-およびm-メトキシル基のジアニシルメタン、あるいは、1,2-ジアニシルエタンのラジカルカチオンのC-H結合開裂反応の反応機構、温度効果などについても検討した。
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