研究概要 |
シベリアのタイガと呼ばれる寒帯林はエニセイ川を挟んだ東西でその主な樹種が異なる.また,気候にも東西差が認められ,一般に東シベリアの方が寒冷である.今年度は植生と気候のこの東西の差に注目して解析を行なった.植生データとしては気象衛星NOAAの観測値から計算される「植生指数」の週別値を用いた.植生指数とは葉緑素の光の反射率が近赤外域と可視域とで大きく異なることを利用して,地表の緑の葉の量を指標化したものである.また、気候要素としてはCD-ROM "Global Daily Summary" から得られる観測地点における気温を利用した. 植生指数の週別値には雲の影響が強い.そこで,各週の前後3週間の週別値から植生指数の最大値を採用することによって(3週間の移動最大),雲の影響をできるだけ小さくするよう工夫をした.対象期間は1987年とした.週別の植生指数は分布図として図化され,さらにコンピュータ上でアニメーションが作成された.植生指数は5月頃からまず西シベリアとアムール川流域で増加が開始し,1ヶ月程度遅れて東シベリアで増加の開始が起こることがアニメーションよりわかった.また,秋季において植生指数が低下する時は,やはり西シベリアが先で,後に東シベリアの植生指数が小さくなることがわかった. 植生指数が年間で最大となる時期を探すと,これも西シベリアの方が東シベリアよりも1ヶ月程度早いことがわかった.週平均で-30℃以上の積算気温を計算したところ,積算気温が350°に達する時期の地域性と,植生指数が年間最大となる時期の地域性が対応してあり,このことから植生活動の東西差には気温要因が強く影響していることがうかがわせる.
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