研究概要 |
金属では,結晶粒が10μm以下の大きさになると高温変形能が増加し,超塑性現象が発現する.この超塑性現象には結晶粒界・相界面が大きく寄与しており,更に微細になるほど高温延性が改善されると考えられる.これを達成するためには,先ず,結晶粒界・相界面の構造をナノメータースケールで調べる必要がある.本研究では,表面の個々の原子を観察・分析することが出来るAPFIMを用いて,規則合金,金属間化合物の結晶粒界構造・相界面構造に関する超微視的構造を原子スケールで明らかにすることを目的とした.更に,得られた情報から結晶粒の微細化を促進することを目指している. 2元規則合金のFIM原子像の研究では,Pt_3Co規則相ではPt原子が,Ni_3Ge原子が結像に寄与していることが明らかになった.さらに,原子像から見ると,各原子の各原子位置での電界蒸発の様子が分かり,その結果,原子の結合の強さを知ることが出来た. ボロンをドープしたNi_4Mo規則合金の各種相界面でのボロンの分布の研究では,FIM観察すると,規則相境界には,ボロン原子はいずれの規則相境界も存在した.規則化前期に対応する領域では,全ての相境界は接触しており,ボロン原子の偏析はAPBで47%と最も多く,次ぎにPTBで35%であり,APTBで28%と最も少なかった.規則化後期の特徴をそなえた領域では,接触型相境界に加えて,非接触型相境界が存在した.非接触型境界は,全境界に対して,約30%の割合であった.接していない境界の巾は,1〜15nmであった.ボロン原子の偏析はAPTBで30%,次ぎにAPBで20%,PTBで5%であった.規則化後期の場合も,相境界でのボロン原子の分布も明らかにすることができ,最も頻度の高い最近接ボロン原子間距離は,APTBで3.0〜4.0nmと大きく,APB,PTBでは1.5〜3.0nmであった.このように,結晶粒界・相界面の構造を原子スケールで調べることが可能になった.超塑性現象との関連を考察することが次ぎの課題である.
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