研究概要 |
前年度までに見出した傾斜組成化した高耐候性クロム置換ゲ-サイトα-(Fe_<1-x>,Cr_x)OOHを含む各種人工さび膜を作成しそのKCl水溶液中の膜電位を測定し、さび層のイオン選択透過性を調べ、以下の知見を得た。 1.オキシ水酸化鉄および酸化鉄ともにアニオン選択性を有する。β-FeOOH>γ-FeOOH>α-FeOOH>α-Fe_2O_3>Fe_3O_4の順にアニオン選択性能は低下し、Fe_3O_4ではほとんど選択性はなくなる。 2.α-(Fe_<1-x>,Cr_x)OOH中のCr含有量が傾斜組成的に増大するにつれてアニオン選択性は弱まりCr量が3.8mass%以上ではカチオン選択的となる。すなわち、耐候性鋼の安定さび層であるクロム置換ゲ-サイトはカチオン選択性を有し、Cl^-のさび層中への侵入を抑制する作用を発現する。 3.吸着酸素酸イオンはα-FeOOH、α-(Fe_<1-x>,Cr_x)OOH、γ-FeOOH膜とも、そのアニオン選択性を弱めるか、もしくはカチオン選択性へと変化させる。 4.イオン選択透過性に及ぼすKCl溶液のpHの影響に関し、Crを含まぬゲ-サイト型結晶α-FeOOH膜ではpH依存性はなく膜電位は一定でありアニオン選択的であるのに対し、Crを含有するとpH5以下では大きく膜電位に影響し、Cr量が12mass%のゲ-サイト膜では中性〜アルカリ性ではカチオン選択性を有するにもかかわらず、pH5以下ではアニオン選択性を有するようになる。 5.さび層のイオン選択性の観点から、耐候性鋼のさび層の保護性は内層クロム置換ゲ-サイトのカチオン選択性/外層アニオン選択性膜からなる一種のバイポーラ膜の形成により、カソード反応が抑制されると結論される。
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