研究概要 |
(1)NiならびにNi_3Al単結晶中に存在する単独の転位の挙動の分子動力学シミュレーションを行った.初期の完全転位は拡張転位に分離し,その様子は従来の実験で報告されている挙動と一致しており,分子動力学計算が妥当であることを示す.転位やAPBにより発生する局所的な応力場を,サイトポテンシャルエネルギーならびに応力エネルギーにより明らかにした. (2)NiならびにNi_3Al単結晶の塑性変形挙動に関するシミュレーションを行うとともに,局所的な変形の評価方法の確立を目指した.個々の原子についてその第一隣接原子の配位の仕方に着目し,配位数の変化を尺度とすることにより,塑性変形にともなう局所的な構造変化を解析できることを明らかにした.転位速度は,298KではNi,Ni_3Alともに2.06x10^3m/sであるが1200Kでは,Niが1.38x10^3m/s,Ni_3Alが0.97x10^3m/sである.これらは音速の数分の一オーダーの速度である.温度上昇による転位速度の低下は,個々の原子の熱振動が大きくなり,転位の進行を妨げているためと考えられる.また,その影響はNiよりもNi_3Alで大きい. (3)塑性変形域における,γ'相とγ相が(100)面で直接接合している整合界面(NFGM:無傾斜界面),ならびに,(b)γ'相からγ相へのAl組成の分布が<100>方向に連続的に変化している整合界面(FGM:傾斜界面)と,転位との相互作用についてのシミュレーションを行った.NFGMならびにFGM構造においてすべりが発生する直前のy軸方向の応力成分は,NFGM構造がひずみ量8.8%において-12.8GPa,FGM構造がひずみ量8.2%において-12.0GPaとなる.NFGM構造の局所的な変形量は大きい.サイトポテンシャルエネルギーは,NFGM,FGM構造共にNi相の方が高くなっている.界面付近のAl原子のエネルギーは非常に低く,すべりが生じた後でも変化しない.
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