研究概要 |
本研究では,熱電変換材料焼結体の粒界・界面にミクロ傾斜機能構造を形成して,熱電性能を向上させることを目的とした。本年度は,SiGe系熱電材料とBiSb系熱電材料について実験を行った。SiGe系熱電材料については,SiGe粉体をSiH_4プラズマ中で処理を行い,それを焼結することにより,SiGe焼結体の粒界にSiGeよりバンド・ギャップの大きなSiリッチ層を設け,エネルギー・フィルタリング効果による熱電性能向上について研究を行った。BiSb系熱電材料については,その基礎的研究として,Bi粉体をAr,H_2,O_2、SbCl_3+H_2プラズマ中で処理を行い,その焼結体の熱電気的特性について研究を行った。また,O_2プラズマ処理に関しては,実用材料であるBiSbについても同様の実験を行った。 1.SiH_4プラズマ処理したSi_<80>Ge_<20>焼結体に関しては,粒界に形成されたSiリッチ層によるポテンシャル障壁によって,低エネルギー・キャリアの伝導が阻害されるエネルギー・フィルタリング効果によるものと考えられるゼ-ベック係数の増大が観測された。 2.O_2プラスマ中で処理したBi焼結体は,ある程度の処理時間では,電気伝導率が増加したが,ゼ-ベック係数についてはほとんど変化がなかった。比較のために,大気中で酸化させたBi粉体を用いた試料については,酸化時間の増加に伴って,単調に電気伝導率が減少し,プラズマ粉体処理による電気伝導率の増加は粒界の単純な酸化によるものでないことがわかった。また,Bi_<91>Sb_9焼結体においても,同様の効果が得られた。全てのプラズマ中で処理したBi焼結体の熱電気的性能指数は,単結晶の結晶粒が無配向したとして得られる値を越えており,プラズマ粉体処理はBi焼結体の熱電気的特性を向上させることが明らかになった。
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