研究課題/領域番号 |
09229249
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大越 慎一 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (10280801)
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研究分担者 |
石橋 賢一 (財)神奈川科学技術アカデミー, 橋本プロジェクト, 研究員 (70270692)
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研究期間 (年度) |
1997
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研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1997年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 強磁性的相互作用 / 反強磁性的相互作用 / フェロ-フェリ混合磁性 / 三元系CN架橋金属錯体 / 傾斜磁性薄膜 |
研究概要 |
我々は、これまでに強磁性的相互作用(J>0)と反強磁性的相互作用(J<0)を混合する(フェロ-フェリ混合磁性)という方法論で三元系CN架橋金属錯体を合成し、自発磁化、キューリ-温度、ワイス温度、保磁力などの強磁性体(磁石)の各種磁気特性の制御に成功している。本年度では、このようなフェロ-フェリ混合分子磁性体の傾斜化を目的として、電気化学的に磁性薄膜を得ることができた。これは、透明な磁性薄膜で、混合比と電位により磁気特性や膜の色を制御することができた。この磁性薄膜のフェロ磁性とフェリ磁性の組成を、原子レべルで空間的に傾斜化することにより、均一系では実現できなかった磁気特性の制御について検討した。 フェロ磁性体のFeII1.5[CrIII(CN)6]は黄褐色、フェリ磁性体のCrII1.5[CrIII(CN)6]はほぼ透明な2mm程度の膜であった。これらの膜が形成される際の還元電位はFeII1.5[CrIII(CN)6]膜が0〜-1.0V(vsSCE)、CrII1.5[CrIII(CN)6]膜が-0.84〜-1.0Vであったことから、まず、電位を-0.84Vに固定して混合膜の合成を行った。その結果、得られた膜の吸収スペクトル、IRスペクトル、粉末X線回折の測定を行ったところ、FeII1.5CrIII(CN)6とCrII1.5CrIII(CN)6の間の物性を示していることから、FeIIとCrIIが原子レベルで混合した(FeIIxCrII1-x)1.5[Cr(CN)6]膜であることがわかった。薄膜の色は、FeII1.5[CrIII(CN)6]か黄色透明(lmax=454nm)、CrII1.5[CrIII(CN)6]が無色透明である。混合膜の色は混合比に応じて変化し、x=0.17付近では紫色、x=0.41付近では赤色を示した。吸収スペクトルからも、吸収極大が混合比により連続的にシフトしていることがわかった。飽和磁化は、x=0.11でほぼゼロになった。また、膜の保磁力はx=0(Hc=80G)、x=1(Hc=200G)に比べて数十倍の値(Hc=3600G)を示した。さらに、磁化vs温度曲線(10G)からx=0.11〜0.13の問で負の磁化を示した。これらの磁気特性は、これまで我々が報告してきた最近接問の超交換相互作用だけを考慮すれば良いフェロ-フェリ混合磁性体特有の磁気的物性と合致している。また電位を制御することでxを変化させることができ、電位制御でも磁気的物性および光学的物性を制御できることがわかった。従って、成膜中に電位を変化させることで、多層化および傾斜化した磁性薄膜を極めて容易に得ることができる。そこで、電位を-0.84Vから-0.94Vまで変化させて膜作成を行ったところ、傾斜組成の磁性薄膜が得られることがIR、UV-visスペクトルなどの結果からわかった。
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