研究概要 |
本研究者は、酸素原子と高い親和性を有する金属としてのアルミニウムを選び、二つの金属間の距離をうまく調節することによりカルボニル基へのσ-結合型を有する二点配位型ルイス酸の創製を目指した。このために必要なスペーサーとして、2,7-ジメチル-1,8-ビフェニレンジオールを選び、これにジクロロメタン中、2当量のトリメチルアルミニウムを加えることにより、二点配位型ルイス酸である(2,7-ジメチル-1,8-ビフェニレンジオキシ)ビス(ジメチルアルミニウム)を合成した。これにカルボニル基質である5-ノナノンを加え、続いて還元剤としての水素化トリブチルスズを低温で加えると還元体である5-ノナノールが86%の収率で得られた。一方、一点配位型ルイス酸としてのジメチルアルミニウムム2,6-キシレノキシドを用いて同様の反応条件下で還元を行うと5-ノナノールはわずか6%取れたにすぎなかった。さらに、二点配位型ルイス酸の有効性を向山アルドール反応、すなわち、1-(トリメチルシロキシ)-1-シクロヘキセンとベンズアルデヒドとの反応に適用したところ、望ましいアルドール体が87%の収率で得られたが、相当する一点配位型ルイス酸では全くアルドール体が生成しなかった。さらに、カルボニル基質としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を選び、二点配位型ルイス酸のカルボニル基への二点配位能力に関する知見を得るため、低温での^<13>C NMR測定を行ったところ、一点配位型ルイス酸とDMFとの1:1複合体におけるDMFのカルボニル炭素の化学シフト値に較べ、二点配位型ルイス酸とDMFとの1:1複合体におけるDMFのカルボニル炭素の化学シフト値がさらに低磁場シフトを起こすことから、二点配位型ルイス酸の二重活性化によりカルボニル基は親電子的に強く活性化されていることがわかった。このような二点配位型ルイス酸によるカルボニル基の二重活性化の概念は、エーテル系基質にも適用できることも見い出した。
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