研究概要 |
昨年度に引き続き、ビシクロ[3.2.1]オクト-6-エン-2-オール及び8-メチレンビシクロ[3.2.1]オクト-6-エン-2-オール骨格に組み込まれたオキシコープ系化合物の陰イオン促進シグマトロピー転位反応を取り上げ、1)可能な転位反応の選択性を向上させること、2)転位反応の活性化基で、後の変換が容易なものの開発、の二点を目的として研究を進めた。 a)ビシクロ[3.2.1]オクト-6-エン-2-オール類の陰イオン促進[1,3]転位反応 ビシクロ[5.2.1]デク-8-エン-4-ノンを生じない基質として、2-位にフェニル基をもつアルコール二種類を合成し、塩基としてKN(SiMe3)2を用い、溶媒を使い分けると、出発のアルコール立体化学に係わらず、置換基の立体を制御した形で、二種類のジキナン([5-5]縮環系化合物)を作り分けることができた。以上の結果を念頭に、ビニル基をもつ基質の反応を調べた。トルエン中での反応では、双方のアルコールからトランス-オキシコープ系をもつジキナンが選択的に生成した。ジグリム中の反応を、-78℃で行うと、双方からシス-オキシコープ系をもつ化合物が主生成物となり、二炭素増炭環拡大体にあたるビシクロ[5.2.1]デク-8-エン-4-ノンが副生した。反応温度を高くすると環拡大体の割合が増大した。 b)8-メチレンビシクビシクロ[3.2.1.]オクト-6-エン-2-オールの陰イオン促進[1,3」転位反応 この系の[1,3]転位反応は、エキソメチレン炭素と結合するのもとC2橋炭素への転位とが考えられる。水素化カリウムやカルウムアミドを用いた場合、エキソメチレン炭素への転位が極めて起こりやすく[5-6]縮環系化合物が得られることが知られていた。ところが、ナトリウムアミドやリチウムアミドを用ると、[5-5]縮環系化合物であるC2橋炭素への転位生成物を優先して得ることができた。 次いで,[1,3]転位反応を活性化し、骨格変換後は容易には変換可能な基の開発を試みた。このような基の一つとしてベンゾチアゾリル基が有効であった。これらの知見を基に、最近、単離、構造決定されたジュニセドラノールの全合成のためのモデル実験を試みた。
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