研究概要 |
1、スズエノラートの官能基選択性変換 スズエノラートに配位性化合物として4級アンモニウムブロミドを等モル量加えると、反応性が大きく変化し、各種ハライドとのカップリング反応が選択的に進行した。エノラートが本来有しているカルボニル基に対する付加反応性はほとんど消失するため、これらの共存する系でも官能基選択性の転換が可能なことを実証し、その結果をすでに公表している。配位子によるエノラートのカルボニル基に対する反応性の消失は、ケトンよりも活性の高いアルデヒドの場合でも抑制され、その効果の高さを確認している。。 Bu_4NX(X=Cl,Br,I)のスズエノラートへの配位の状態を、^<119>SnNMRを用いて検討し、官能基選択性の制御には配位の強さだけでなく、配位子の電気陰性度も重要であることが判明した。Bu_4NIの配位力は弱い。Bu_4NClではスズのピークが消失したが、これは相互作用が強すぎブロードニングが起こっているためと推定される。Bu_4NBrは30ppm程度のシフトを示し、効果的な配位をすることが判明した。 2、還元におけるスズヒドリドの官能基選択性制御 スズヒドリド(Bu_3SnH)は適度な反応性を有することから選択的な還元剤として広く利用されているが、作用機構がイオン的およびラジカル的なものに変化しやすく、各種条件により選択性が大きく異なる欠点を有している。本研究では、条件によらずイオン的に進行し官能基および立体選択性を制御できるスズヒドリドの創製を検討した結果、次のようなスズヒドリドを開発した。 (1)Bu_2SnIH;還元されやすいアルデヒドには作用せず、不飽和ケトンの1,4-還元のみを促進。 (2)Bu_3SnH-Bu_4NBr錯体;条件によらずイオン的にカルボニル基を還元し、活性も大きく向上。 (3)Bu_2SnFH;Fの強い電気陰性度により還元力が大きく向上、また1,2-還元を選択的に生起。
|