研究概要 |
複雑な構造をもつ生物活性天然物などの多段階合成では、その成否を決定づける鍵段階反応がいくつかある。本研究は、海洋産超微量天然物の一つで強い抗腫瘍活性をもつ変型18員環マクロライド、テダノリドの合成研究を例に、複雑な分子の合成計画を計算化学を中心に立案し、高い選択性と効率をもった合成のための方法論の確立を目的として行われている。昨年度までにテダノリドの鍵中間体としてのラクトンと対応するセコ酸を分子力学計算などにより分子設計し、C1-C7,C8-11,C13-17,C18-21の4つのフラグメントをそれぞれ合成し、縮合してセコ酸とし、更にマクロラクトン化も行っている。しかし、行程の長さ、選択性、効率が悪く、大巾な改良を要する。本年度は先ず、再現性の悪かったC8-C11およびC18-21のビニルヨード体の位置選択的合成の改良を行った。第二には最も重要なフラグメントのC1-C7合成に関して、種々の検討を重ね、α,β-不飽和エステルのAD-mix酸化による直接ジオール化法を確立し、反応機構も明らかにし、これによりC1-C7フラグメント合成の行程数を半分以下とし、しかも各反応の位置、立体選択性、収率を大巾に改善することができた。現在は、主にC13-C17の改良合成法を検討中である。
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