研究概要 |
本研究は当グループが開発した効果的なオレフィン環化反応剤を縦横に駆使して,重要な生物活性を有するテルペノイドの合成を達成せんとする研究で,1)生合成類似オレフィン環化反応の新たなキラリティー制御法を確立する 2)生合成類似のルートによる抗腫瘍性ジテルペンのタキシン骨格の不斉合成研究を展開する 3)エポキシスクワレンの環化反応の中間体である二環性トリテルペンアルコールを合成し,これから低温で発生させたカチオンの命運を探り,ステロール生合成に秘められたC環形成にまつわる謎(いかにanti-Markovnikovの壁を打ち破るか)を探る,を目的として計画された. 本年度はオキシドスクワレンの環化反応の中間体である二環性トリテルペンアルコールを水銀トリフラートによるビスホモファルネシル酸-t-ブチルの環化反応で合成し,これをルイス酸と処理してカチオンを発生させた.すなわちステロイド生合成の中間体カチオンを発生させたことを意味しており,X線解析を用いてその非酵素的命運を探ることが出来た.チェアーチェア-型のB環カチオンは6/6/5の三環性化合物を生じたが,B/C環の立体化学は予想と異なり,選択的にトランスで縮環することが明らかになった.また,B環C-9位の立体化学を反映して,C-9βのカチオンはC-8位メチル基がC-13位に転移するのに対し,C-9α体はメチル基が全く移動しないことも明らかになった. ホモゲラニルアセテートの水銀トリフラートによる環化反応により,タキソ-ルのA環の非常に効率的な合成法を開発した.ここに,側鎖を導入して低原子価チタンによるMcMurry反応を行い、バーチシラン体であるビシクロ〔9.3.1〕骨格からなる重要中間体を合成した.生合成型の渡環反応を徹底的に検討した.
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