研究概要 |
フラーレン及びその誘導体の機能発現のためには、単結晶のように分子を整然と並べること、少なくとも2次元パターンの構築が必要である。さらに、フラーレンが高価なため汎用材料として用いることは非現実的であるので、局所的な箇所への応用が予想され、その量もできる限り少量になることが望ましい。従って、これらの条件を満たした材料化を行うには、フラーレンの薄膜化が不可欠な技術であると考えられる。 我々は架橋鎖を用いて位置選択的・立体選択的な両親媒性[60]フラーレンビスフェノール体の合成に成功しているので、それら両親媒性フラーレン誘導体体のラングミュア膜形成能を比較検討した。 市販のLB膜作成装置を用いて、ビス体のベンゼン溶液を角型水槽の水面に展開し、可動性仕切りで表面圧を制御しラングミュア膜を調製し、その安定性を面積・表面圧曲線から測定したところ、ビスフェノール体においては、モノフェノール体に比べ、いずれも膜の安定性に向上が見られ、(A_1,H_1)体)A_1,H_1)体においてフラーレンの断面積に等しい100平方オングストローム程度の極限分子占有面積が観測された。また、(A_1,D_1)体において、展開溶媒であるベンゼン中で、予め強固に分子内水素結合をしていることがプロトンNMRスペクトルから確認された。分子内水素結合が水分子との溶媒和を妨げる結果、(A_1,D_1)体のラングミュア膜形成能は(A_1,C_1)体や(A_1,H_1)体と比較して低下する。このようにフェノール残基の個数、あるいは付加位置の違いにより明らかに異なった挙動を示し、膜形成能に差異が認められた。
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