研究概要 |
立体規則性を有する置換ポリアセチレンはらせん構造をとる可能性がある。また、キラルな置換基を用いることにより、主鎖にキラリティーを有するポリマーが合成できることが期待される。本研究ではキラルな置換基を有する二置換および一置換アセチレン類の重合を行い、キラル置換基の主鎖のヘリックス構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。以下に本研究の成果の要旨を述べる。 1.光学活性なピナニル基を有するポリ(ジフェニルアセチレン)-光学活性なピナニルジメチルシリル基を有するジフェニルアセチレンはTa触媒により重合し、良好な収率で製膜可能な高重合体を与えた。ポリマーの比旋光度([α]_D)は+2475°、+1543°(c2x10^<-3>,CHCl_3)と非常に大きい値であった。CD測定ではポリマー主鎖のUV吸収領域において非常に大きいモル楕円率([θ]=4x10^4)を示した。これらの結果から、ポリマー鎖が一方向巻きのらせん構造をとっていると考えられる。 2.光学活性なピナニル基を有する二置換アセチレンポリマー-光学活性なピナニルジメチルシリルフェニル基とメチルまたは塩素を有する二置換アセチレンがTa、NbまたはMo触媒により重合し、M_W100万を越える高重合体が得られた。ポリマーの[α]_Dはモノマーと逆の符号を示した。CD測定では290または280nm前後にCotton効果と考えられる極大が見られた。これは主鎖がらせん構造を有していることを示している。 3.ポリ[(-)-プロピオール酸メンチル]-Rh触媒により合成したポリ(プロピオール酸メンチル)の[α]_Dは+368°(c0.02,cyclohexane)で、モノマーの-82°(c1,cyclohexane)に対して符号が逆転し、かなり大きな値を示している。またCD測定においても主鎖の紫外吸収領域に強い誘起CDが見られた。このことから主鎖がらせん構造を有しているものと推定される。
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