研究概要 |
本研究では,兵庫県南部地震でも被害が特に多くみられた鉄筋コンクリート造建物を主な対象として,都市直下型地震動のどの特性が動的破壊力として有効なものであるかを明らかにすることを目的としている。 そのため,まず記録地震動の破壊特性を再整理することが必要であり,地震動が及ぼす繰返し効果による累積的な破壊力と,瞬間的な過大入力による破壊力の両者を定量的に比較できる指標として,本研究ではエネルギー応答の概念を用いている。ここでは履歴ループ1/2サイクルの時間における瞬間的なエネルギー入力を定義し,地震動による構造物へのエネルギー入力過程を検討することによって地震特性の違いをよく評価できたといえる。また瞬間的なエネルギー入力とそのときの構造物の応答ループ形状を対応づけることによって,瞬間的な大変形を与える直下型,共振的な応答を励起する海洋型などの,地震動の破壊力特性を考慮して地震時応答変形を推定する一手法を示した。 さらに、以上の検討に基づいて,直下型地震と海洋型地震の特性を反映した模擬地震動を作成し、鉄筋コンクリート柱の縮小模型試験体による振動実験を行った。これは4本の柱,剛な梁,頂部重量からなる同一の試験体を3体作成し,1体は静的載荷実験,2体は異なる特性を持つ模擬地震動による動的振動台実験を行ったものである。慣性力-変形関係などの実験結果の検討によって,地震動の破壊特性に関するいくつかの知見が得られ,解析的検討結果も併せて総合的に評価し,地震動の破壊特性と都市直下型地震に対する耐震設計に用いるべき設計地震力に対する考察を行った。
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