研究概要 |
兵庫県南部地震では,34人の死者が出た西宮市仁川の地すべりほか,阪神間の住宅地で多数の地すべりが発生した.地震は土層に速い応力変化を与えるため,非排水せん断状態になる.地震時地すべりを再現することを目的として,兵庫県南部地震を契機として,地震の実波形(〜5Hz)での載荷・制御・データ収録のできるリングせん断試験機を開発したが、この試験機を用いて仁川地すべりで採取した大阪層群の砂質土試料で試験を行った.現場に最も近い地震観測点であったJR宝塚駅で観測された3成分の地震記録より,仁川の地すべり斜面のすべり面の深さと方向に作用したと推定される垂直応力とせん断応力を算出し、試験機に入力した.その結果、地震力の載荷後,直ちに移動が始まり,波形のピークが終了してからも次第に加速し高速地すべりを実験的に再現出来た.間隙水圧は載荷と同時に大幅に上昇し,地震波形が小さくなってからも次第に上昇した。移動が生じるせん断ゾーンで粒子破砕が生じ,粒子破砕が生じると体積収縮により間隙水圧が生じる「すべり面液状化」が発生し,地震力が小さくなっても間隙水圧の上昇と運動の加速が継続したと考えられる.すべり面の強度が非常に小さい状態,見かけの摩擦角(φa)が、6.1°とかなり低い値となったことが、仁川の約20°の緩傾斜斜面で,高速地すべりが発生した原因であると説明できた.すべり面液状化の主な原因である粒子破砕の発生特性については、現場の土と豊浦標準砂について比較試験を行い、組成鉱物等の違いにより、粒子破砕は相当程度異なることがわかった。また、周波数特性を調べるために、一定垂直応力下で両振り載荷で液状化させる試験を繰り返した。その結果、両対数グラフ上で高い周波数ほど液状化に至るまでに必要なエネルギーは小さくなることがわかった。
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