研究概要 |
直下型地震では,水平地動にかなりの上下地動が加わる場合がある。本研究では,スパンの長い5層モデル骨組を対象として,3つの記録地震動を増幅したモデル地動を用いて,水平地動のみの場合とそれに上下地動が加わった場合の変位応答,歪応答などの比較検討を行い次のような結果を得た:対象とした骨組,入力地動に関して,1,水平変位時刻歴応答は,水平地動のみを入力した場合と水平地動と上下地動を同時に入力した場合で顕著な差は見られない。2,梁中央の節点は揺れ下がっており,鉛直変位応答は水平地動と上下地動を同時に入力したほうが,水平地動のみを入力した場合より大きくなる。3,梁端および梁中央の歪応答は,タフト,神戸では水平地動と上下地動を同時に入力した方が,水平地動のみを入力した場合より大きくなる箇所が多く,その増大率は無視できない。 以上のことから,比較的梁スパンの長い骨組で梁の上下振動が生じやすい場合には,梁の揺れ下がり,それに伴う梁端および梁中央の歪みに上下地動の影響が顕著に現れる可能性があり,上下地動の影響を設計に反映させるには,歪レベルの情報を抽出する必要があることを確認した。 現在,鉄骨造骨組の耐震性能アップの手法として,今後かなり積極的に組み込まれるであろう制振システムの効果を,歪応答量の面から評価する応答解析に取り組んでいる。弾塑性履歴型制振システムを骨祖に組み込んだ場合について,水平・鉛直両方向の地震動入力に対する骨組内の歪応答の低減効果などを調べている。最終的には,直下型地震にも有効な制振システムの特性,設置場所などについて検討する予定である。
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