研究概要 |
山地が多いわが国では斜面のすぐそばにまで人が住まざるをえないため,今日まで地震の度に急傾斜地で斜面崩壊が発生し,多くの人命・人家が失われてきたが,地震による斜面崩壊についての研究はあまり行われていないのが現状である.そこで,各都道府県により指定されている急傾斜地崩壊危険箇所の斜面に着目し,その地震時崩壊危険度を,従来採用されてきた静的な情報(斜面の形状や地質など)に加えて斜面上における常時微動観測により把握した振動特性をも考慮することによって,より的確に評価できる方法の開発を試みた. 1.1995年兵庫県南部地震において地震被害が生じた阪神地区内にある急傾斜地崩壊危険箇所を対象にして,危険箇所の斜面の諸元やこの地震による斜面崩壊の有無などを調査した. 2.各種斜面の振動特性を把握するために,両毛地区(栃木県足利市,群馬県桐生市)にある急傾斜地崩壊危険箇所の斜面上で常時微動観測を数多く実施した.それらの観測結果をもとに,各種斜面の振動特性を推定した. 3.常時微動をもとに推定した各種斜面の振動特性を検証するために,各々の斜面の振動特性を有限要素法により求め,常時微動に基づく振動特性推定の妥当性を確認した. 4.1で調査した各斜面と類似した斜面を2.で観測を実施した各斜面から選び出し,前者の被害状況と後者の振動特性をあわせて検討することにより,従来採用されてきた静的な情報(斜面形状や地質など)に加えて,常時微動から調べた斜面の振動特性をも考慮した急傾斜地斜面の地震時崩壊危険度の評価方法を示した。
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