阪神・淡路大震災では、災害弱者対策の必要性が指摘された。しかし、どのような対策が必要であるかは必ずしも判明していたわけではなかった。このため本研究では、まず第1に、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者、内部生涯者、知的障害者に関して、震災下での被災の実態と要請される対策について具体的、かつ体系的に調査、分析した。その結果、時期的には災害発生直後の問題だけではなく、応急対策期、復興期にわたる長期に多くの課題が発生しており、かつ生命の確保や維持に加えて、情報面、移動面、社会経済面で配慮すべき課題が明らかとなった。 第2に、これらの課題を防災対策に反映する方策について、阪神・淡路大震災に障害者に対する支援活動を展開した団体や行政当事者、民生委員、社会福祉協議会等に面接調査を行い、その解決方策を分析した。その結果、行政等の人的資源に大きな制約があり、支援ニーズ情報の収集が遅れ、かつ対応する際にも限界があること、ならびに障害者は受け皿として期待される地域の中では生活できていないこと、かつ障害者団体の加盟率もきわめて低いことが明らかになった。現状では対策主体がないのである。したがって、これら個別課題を解決する上で、個別対策を立案・実施するだけでは不十分であり、むしろ統合的に扱うシステムの構築が求められることが明らかとなった。また、その多くは災害発生前の社会状況、福祉施策に大きく依存するものが多く、事前対策にかかわる課題が多いことも明らかとなった。以上から、通常の福祉施策との連携をとったコミュニティ・ケアの推進と事前対策、ならびに支援情報ニーズ収集体制の整備が望まれることを提起した。
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