1995年阪神・淡路大震災では公的扶助による解体撤去が大規模に行われ、要解体家屋数は12万戸に達した。膨大な量の瓦礫の分別・リサイクルは難しく、埋め立て・環境汚染などの深刻な問題をもたらした。今後の地震対策では、建築資源の有効利用とコミュニティの継続性を保つ意味から、補修・補強の推進が求められている。 今年度の研究内容として、同震災の緊急対策、復興対策に関わる行政施策資料を神戸市、西宮市、芦屋市等から収集した。また被災度判定と建築支援諸団体による住宅相談に関する資料を検索した。そのうえで震災住宅の解体と補修・補強に影響する諸要因を整理し、復旧過程を時系列の視点から比較分析した。 研究成果として、災害住宅融資が新築より補修に不利なこと、公費負担のガレキ処理が取り壊しの意思決定を促進したこと、震災住宅の所有者には住宅の被災程度、補修・補強の方法とコストに関する情報が不足していたことなどが明らかになった。自治体の災害対策基本計画にみる被災住宅対策の実態を検討したが、災害救助法の応急救援目的に由来して、より良いコミュニティの再建という長期的視点に欠ける問題点が示された。 米国デラウエア大学で開かれたNCEER-INCEDE Workshopではこの研究成果を発表し、日本とアメリカの震災後対策の違いという観点から議論が深められた。 今後の研究展開として、被災者側の意思決定要因に関するアンケート調査と意思決定プロセスのモデル化が大切と考えている。
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