研究概要 |
1.アデノシルコバラミン関与ジオールデヒドラターゼの高発現、精製および性質 先にクローン化したジオールデヒドラターゼのサブユニット遺伝子を様々な組み合わせで大腸菌に高発現させたところ、それぞれのサブユニットは相互に影響を及ぼし合いながら活性な立体構造に折りたたまれることが示された。3つのサブユニットを同時に高発現させた大腸菌からジオールデヒドラターゼを単一にまで精製するための簡便な方法を確立した。組換え体の精製酵素はα_2β_2γ_2のサブユニット構造をとっており、親菌Klebsiella oxytocaから精製した酵素と同様の性質を示した。 2.ジオールデヒドラターゼの再活性化因子の遺伝子クローン化と塩基配列解析および大量発現 ジオールデヒドラターゼは、生理的基質の一つであるグリセロールにより酵素反応中に自殺不活性化を受ける。K.oxytocaには不活性化されたホロ酵素をアデノシルコバラミン、AT、Mg^<2+>存在下で再活性化する系が存在する。本研究では、3'-隣接領域に存在する2つの遺伝子が再活性化因子の遺伝子であると同定できた。塩基配列の解析より、再活性化因子は、610アミノ酸残基、分子量64,266と、125アミノ酸残基、分子量13,620の2つのサブユニットから成ることが分かった。この2つの遺伝子をそれぞれddrA、ddrB遺伝子と名付けた。ホモロジー検索により、このような再活性化因子はグリセロールデヒドラターゼにも存在することが強く示唆された。 3.ラット肝臓コバラミン関与メチオニンシンターゼの精製と性質 コバラミン関与メチオニンシンターゼをラット肝臓より精製した。Mono-Qカラムクロマトグラフィーにより酵素は2つの活性画分に分かれた。これらを溶出する順番にピークI、IIとすると、ピークI、IIの酵素はそれぞれ18,000倍、44,000倍に精製された。活性の回収率はそれぞれ0.7%および1.8%であった。これら2つのピークの相互転換は認められなかった。主要な画分であるピークIIの酵素は分子量約143,000の単量体であり、電気泳動的に単一に精製された。活性の発現には還元系とS-アデノシルメチオニンが必要であった。
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