研究概要 |
平成9年度はdiaminoBis-THF化合物(2)のアミノ基の立体化学が(R,R),(S,S)のものを選択的に合成した。また、diamino-bisfuran化合物(3)はアミノ基の立体化学は混合物としてアルキル鎖の長さの異なるリガンドを合成した。このように合成したリガンドdiaminoBis-THF(2)およびdiamino-bisfuran化合物(3)とDNAとの相互作用を数種類の2本鎖DNAを用いて測定した結果、以下のことが明らかになった。 1)(R,R)-2はGC-richの2本鎖DNAを選択的に安定化し、C-G:C-rich3本鎖DNAも安定化した。 2)(R,R)-2とGCrichなDNAとの結合はNaCl緩衝液中よりKCl緩衝液中の方が速やかに起こった。 3)立体異性体の(S,S)-2はこのような安定化効果は全く見られず、配位子の立体化学がDNA認識に重要であることが示された。 4)(R,R)-2はGC-richな2本鎖DNAとの相互作用によって大きな構造変化を引き起こした。 5)diamino-bisfuran化合物(3)では選択性の転換が行われ、AT配列選択的な2本鎖DNAの安定化を示した。 6)短いアルキル鎖を持つdiamino-bisfuran化合物(3)は全く2本鎖DNAを安定せず、DNA結合における長鎖アルキル基の重要性が示された。 以上のように、類似する骨格のdiaminobis-THF(2)およびdiamino-bisfuran化合物(3)が全く異なる配列選択性を持ち、それぞれ選択的にGC-richDNAおよびAT-richDNAを認識できることが明らかになった。これらの部分は遺伝子発現制御で重要な配列によく見られることから、遺伝子発現の阻害を行う分子としての展開が期待される。
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