研究概要 |
光合成反応におけるMg,Zn,Feの役割を検討した。好気好酸性細菌Acidiphilium(A.)rubrumが、これまでに知られるMg型クロロフィルとは異なる、Zn型バクテリオクロロフィルa(Zn-BChla:正式名称としてはZn-バクテリオフェオフィチン)を持ち、高い光合成活性を示すことを確認した。この常識を覆すZn型光合成と、既知のMg型光合成とを比較した。 pH2.5-6.0の酸性条件下で好気・暗所で従属栄養的にZn-BChlを生産し、光照射で紅色細菌型の光合成と炭酸固定を行うA.rubrumの膜標品および反応中心標品の吸収スペクトルは紅色光合成細菌に比べて5〜15nm短波長シフトし、きれいなピンク色を示した。細胞は13:2:1のZn-BChla:Mg-BChla:BPhea(=金属を持たないバクテリオフェオフィチン)比をもち、膜標品にするとMg-BChlが殆ど消失した。単離反応中心複合体にはMg-BChlは含まれず、Zn-BChlaとBPheaのみが含まれていた。Znは膜に選択的に存在することが示された。膜内の反応中心複合体の電子供与体(バクテリオクロロフィル2量体)の酸化還元電位はZnでもMgでも変わらなかった。人口光合成系では従来からMgよりも安定なZn-ポルフィリンや、人口キノンが使われてきたが、Zn-BChlを使う光合成系の発見は、原始光合成系がZn-ポルフィリンで始まった可能性も示唆する。緑色細菌のヘムについても検討し、電子移動と、タンパク質構造の進化を検討した。
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