研究概要 |
Mnクラスターの磁気相互作用の理論的な解析:4核MnクラスターのMnイオン間の磁気的相互作用(S_2状態)の可能な全ての組み合わせについて、数値計算によりクラスターのエネルギーを算出した。マルチライン信号の磁気的性質とXAFS実験から報告されているMnクラスターの性質、i)1から3個のdi-μ-oxoで架橋されたMn(III)-Mn(IV)ユニット(-250cm^<-1>)を持つ、ii)基底状態と励起状態のエネルギー差が30cm^<-1>、の条件を満足する全ての組み合わせを抽出した。提案されているMnクラスターのモデルが持つ磁気相互作用が、得られた可能な組み合わせを満足するか否かを検討する事により、モデルの妥当性を評価した。 配向マルチラインS_2信号のシュミレーション解析:薄膜上に配向した光化学系II膜断片についてチラコイド膜法線方向にたいする角度依存性S_2マルチラインスペクトルを精密に測定した。得られたスペクトルについてMn(III)イオンの異方性を考慮にいれた非線形最小2乗法によるシュミレーション解析を行い、超微細結合定数とその異方性を決定した。また、S_2状態のMnクラスターの酸化状態はMn(III,IV,IV,IV)と推定された。強い異方性を持つMn(III)イオンの超微細結合テンソルの主軸の向きより、Mnクラスター系のg-値の主軸のz方向とチラコイド膜法線方向のなす角度は50度と推定された。この結果はdi-μ-oxo架橋したMn(III)-Mn(IV)ユニット面がチラコイド膜法線方向と40度の角度をなすことを示している。配向試料のEXAFS測定により報告されている2.7AMn-Mnベクトルがチラコイド膜法線方向となす角度を考慮することにより、酸素発生系Mnクラスター中のdi-μoxo架橋したMn(III)-Mn(IV)ユニットの空間配置を決定した。
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