研究概要 |
アキラルな基質の形成する不斉結晶のキラリティーのみを不斉源として利用する反応も絶対不斉合成反応に属し、近年,分子間,分子内光反応を用いた成功例が報告されている。我々は,含窒素カルボニル化合物であるアミド,イミド,チオアミド,チオイミドが高い確率でキラルな空間群の結晶を与えることを見いだした。固相光反応を利用した絶対不斉合成の限界と有機合成反応への応用,キラル化の解明を目的として種々のアキラルな基質の結晶化と光反応性を検討し,以下のような絶対不斉合成反応を達成した。 種々のS-アリール◯-ベンゾイル安息香酸チオエステル及びチオエステルについてX線結晶構造解析と光反応を検討した。チオエステル誘導体は光照射に対し高い反応性を示し,合成した全ての基質が固相光反応により対応するフタリドを高収率で与えた.8種類のチオエステルのX線結晶構造解析を行ったところ,3つの化合物が不斉結晶を形成していることを明らかにした。その光反応生成物であるフタリドは光学活性体として得られた。結晶中の分子配座はベンゾイル基が中心の芳香環に垂直でエステル側が平面構造であった。 エステル誘導体でも8種の基質中2つが不斉結晶を形成した。エステル誘導体では,光反応に不活性な基質も存在し,X線結晶構造解析による結晶中の分子配座から反応性の考察ができた。 フタリド生成の反応機構としては,原料と生成物について異常分散法を用いて絶対構造を決定したところ,ラジカル対を経由する反応機構ではなく,アリール基の移動を伴って環化し生成することが明らかとなった。さらに標識化合物について検討しその反応機構を解明した。
|