研究概要 |
本申請研究は、ラセミ触媒による触媒的不斉合成を極微量の不斉活性化剤を用いて達成しようとするものである。既に申請者らは、全く新しいラセミ触媒の活用法として、一方のエナンチオマーTi触媒を選択的に活性化する「不斉活性化法」を報告した。それに対して不斉活性化剤がラセミ触媒のいずれのエナンチオマーをも活性化するケースも考えうる。そうしたケースを検討するには他の金属へと研究対象を移さなければならない。そこで本申請研究では野依教授らのBINAP-Ru触媒のジアミンによる活性化を取り上げた。 1)ラセミ触媒の不斉活性化における基質依存性 ラセミのBINAP′-Ru触媒に対してジアミンの量を0.5当量以下に抑えてもBINAP′-Ru/ジアミン錯体はほぼ1:1のジアステレオマ-比で生成した。さらに、いずれのジアステレオマ-錯体がより高い触媒活性を示すかはケトン基質の構造に依存して決定された。 2)不斉活性化錯体のスペクトル解析 アキラルなビフェニルホスフィン配位子(BIPHEP)を有するルテニウム触媒のキラルなジアミンとの活性化錯体形成についてIHおよび31PNMR分析を行った。ケトン基質存在下でも1:1のジアステレオマ-比でBIPHEP-Ru/ジアミン錯体が確認されるものの、不斉水素化が進行した。 3)エナンチオマー触媒選択的活性化からエナンチオマー非選択的活性化への数値解析ラセミ触媒のホモキラル⇔ヘテロキラル二量体間の平衡定数(K)、不斉活性化剤との活性化錯体形成時のそれぞれのエナンチオマー触媒との反応速度kR,kSと逆反応速度k-R,k-S、さらにはそれぞれのジアステレオマ-活性化錯体による基質の反応速度kR,R,kS,R(活性化剤のキラリティーをRとする)に基づいて、エナンチオマー触媒選択的活性化からエナンチオマー非選択的活性化(基質に依存してジアステレオマ-錯体の触媒活性が決定される)までの連続的変化を数値解析した。
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