研究概要 |
近年の不斉触媒開発では,反応を効率的かつ選択的に推進する遷移金属触媒の金属周りを飾る配位子分子の設計に大きく依存しておりその重要性が増していることが分かる.全く新しい触媒系も配位子の設計と合成が望まれ,ならびに目的の触媒反応の検討が必要である.本研究では,われわれがこれまでに開発した窒素系配位子Pyboxを用いて全く新規な錯体Ru(Pybox-ip)(Pydic)を創案かつ合成し,酸化剤との組合せによりオレフィンのエポキシ可能があること,さらに不斉誘導を持ちあわせることを発見した.特に,いままで金属触媒の酸化剤として利用されたことのないPhI(OAc)2が触媒効率と不斉誘導ともに有効であることを見いだした.従来では,不斉誘導が難しいといわれたトランスオレフィンの不斉エポキシ化で74%光学収率に到達した.錯体のX線構造解析にも成功している.さらにビピリジン錯体の合成を同時に成功した.この錯体は,空気およびブチルハイドロペルオキシドによるオレフィンのエポキシ化に活性をみせた.生体内酸化反応の新規なモデルとして注目できる系となる.現在,Pyboxの置換基変換によるさらなる反応と不斉誘導の効率化を検討している.その他,不斉シクロプロパン化における新しい修飾剤としての配位子の合理的設計に取り組んでいる.従来のホモデユアル型配位子から得られた知見よりシングルキラルにしても十分選択性を保つことができると考え検討したところ反応ができることを見いだした.
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