研究概要 |
ドナーとアクセプターから構成された水素結合型電荷移動錯体におけるプロトン-電子連動現象の制御は,固体状態での電子特性を多彩にする新しい方法の一つである。本研究では,有機分子間の電荷移動相互作用を金属原子間の酸化還元特性または配位子間のスタッキング相互作用に置き換え,遷移金属錯体を用いたプロトン-電子連動システムの開発を行った.先ず,基礎研究として新規の平面型二核銅(II,I)混合原始価錯体を4種合成した.磁性,電子スペクトル,およびESRスペクトルの測定およびX線結晶構造解析等から,これらの錯体がClass IIタイプに帰属される混合原子価二核銅(II,I)錯体であることを明らかにした. 一例として,X線結晶構造解析から銅-銅間に対称心を持たないが,二つの銅の配位環境はほぼ等価である(銅-銅間距離,約2.40A)錯体が得られていることを明らかにした.すなわち,金属錯体カチオンはa-軸に沿って積層カラム構造を形成しており,さらに分子面に平行な方向では配位子間で水素結合を形成している.この錯体の塩化メチレン中でのESRスペクトルから,RobinとDayの分類によるClass IIタイプに帰属される混合原子価二核銅(II,I)錯体であることも明らかにした.
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