研究概要 |
本年度の研究計画にそって、活性酸素種である一重項酸素分子のエチレンへの付加によるジオキセタン生成反応に対し、拡張基底関数によるab initio分子軌道法およびCASSCF,MP2,CASPT2,CC等の高精度な手法を用いてその反応機構の理論的解析を実施した。非動的電子相関を含むCASSCF{2,2}/6-31G*法と動的電子相関を含むMP2/6-31G*法を用いて、反応の中間体および遷移状態を決定した。1,4-BRでは、結合C-Oを軸とした回転障壁は4.0kcal/molよりも小さく自由に回転すること、IRC計算より、従来から得られていたゴ-シュ型の遷移状態は始原系とゴ-シュ型1,4-BR中間体とを結んでおり、ジオキセタンへの遷移状態でないことを明らかにした。さらに高精度な手法であるCASPT2,CCSD,CCSD(T)から、この反応が、PEを経て進行するよりはむしろ1,4-BRを経て二段階機構で進行することが判った。 酸素分子を水分子に還元する金属酵素シトクロームCオキシダーゼを対象に反応機構の理論的研究を進めている。Hemea_3のポルフィリン環およびヒスチジン残基のイミダゾール環をアンモニア分子に置き換えたモデルを構築し、ab initio分子軌道法から検討した。反応中間体である[a^<2+>_3,OO-Cu^<1+>_B]および[a^<2+>_3-OO,Cu^<1+>_B]の構造を決定した。特に酸素がa^<2+>_3に結合した構造では、酸素原子間の距離は1.47Aと非常に長くなっていると共に、両酸素原子合わせて約1.4eとかなり負電荷になっていることがわかった。還元反応の初期段階として[a^<3+>_1-OOH,Cu^<1+>_B]の構造を求めた。この構造は、[a^<2+>_3,OO-Cu^<1+>_B]より2.1kcal/mol低エネルギーであることと、[a^<2+>_3-OO,Cu^<1+>_B]が[a^<2+>_3-OO,Cu^<1+>_B]より28kcal/mol高エネルギーであることから、還元反応の初期段階は、活性部位への酸素分子の付加と酸素分子のプロトン化が協奏的に起こっていると結論された。
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