研究概要 |
今年度はヒドロゲルマニウム化合物とオレフインから直接ビニルゲルマニウム化合物を合成する新しい触媒反応の検討を目的とした。多くのRh錯体およびRu錯体を中心に検討を行った結果、Ru_3(CO)_<12>が有効な触媒であることを見い出した。例えばヘキサンを溶媒とし100℃,3時間の反応条件下で,過剰のスチレンとトリブチルゲルマニウムとの反応により,93%の高収率でしかも選択的に対応するビニルゲルマニウムを与えることを見い出した。 この反応は反応温度に大きく影響される。トルエンを溶媒とする反応では,バス温80℃では全く反応はしなかったが,100℃では34%,140℃では67%で対応するビニルゲルマニウムを与えた。溶媒効果の検討では,ヘキサン,トルエン,アセトニトリルは生成物を与えたが,THFおよび塩化メチレンはビニルゲルマニウムを全く与えなかった。オレフィンの適用限界についても検討を行った。スチレン誘導体である,p-CH_3,p-CF_3,p-F,およびp-C1は良好に反応し,対応するビニルゲルマニウムを与えたが,脂肪族のオレフィンである1-ヘキセンやアリルベンゼンは対応するビニルゲルマニウムは得られず,ヒドロゲルマニウムが未反応のまま回収された。この違いを説明するためにアリルベンゼンを用いた反応の初期における経時変化を調べたところ30分後アリルベンゼンはほとんどβ-メチルスチレンに変化していることが明らかとなった。この結果は,1-ヘキセンやアリルベンゼンは反応の初期の段階で反応性が低い内部オレフィンに異性化することにより反応は進行しなかったものと理解された。
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