研究概要 |
当該グループでは,既に2-exo-hydroxy-10-bornyl基をキラルリガンドとしてキラルハロカルコゲヌラン類のキラル合成に成功しており,これらキラルハロカルコゲヌラン類の求核置換反応の立体化学的研究を行い,カルコゲン-ハロゲン結合の形成,切断の詳細な反応機構を明らかにすることを目的として研究を行った.その結果,以下に示すように,基質,求核反応剤の相違によってDissociative機構あるいはAssociativeな機構で反応することを明らかにすることができた. 1.2-exo-hydroxy-10-bornyl基をキラルリガンドとするキラルハロカルコゲヌラン類の合成 2-exo-hydroxy-10-bornyl基をキラルリガンドとして,キラルハロカルコゲヌラン類の初合成を行い,X線構造解析により,その絶対構造を決定するとともにtrigonal bipyramid構造を確認した. 2.キラルカルコゲヌラン類の求核反応 (1)Dissociative機構(立体保持)で進む反応:キラルハロカルコゲヌラン類の求核反応を行い,ハロスルフランの加水分解,ハロセレヌランの加水分解,セレニミドの生成反応,活性メチレン化合物との反応によるイリド生成がいずれも立体保持で進行し,オキシカルコゲニウムカチオンを経由する反応であることを明らかにした. (2)Associative機構(立体保持および立体反転)で進む反応:ハロテルランとアルキル金属試薬との反応およびキラルスピロスルフランの加水分解が立体反転を伴うことを見い出し,五配位型から六配位型を経由する反応機構を立体化学的に始めて実証した.
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