研究概要 |
インターエレメント化合物を初めとする広範な有機基質の新反応開拓をめざし、従来の三級ホスフィンを補助配位子とする単核金属錯体反応場に代わる新しい多核貴金属反応場として、強い電子供与能を有するアミド配位子をクラスター骨格に導入した一連の新規二核Rh及びIr錯体の合成を行った。[Cp^※Mc1(U_2-C1)]_2(la,M=Rh;1b,M=Ir:Cp^※=n^5-C_5Me_5)をTHF中p-置換アニリン類とブチルリチウムより調製したリチウムアミドで処理することにより、新規カチオン性二核Rh(III)およびIr(III)錯体[CP^※M(U_2NHC_6H_4R-P)_3MCP^※]Cl(2・Cl:2a,M=Rh;2b,M=Ir;R=Me,H,Cl)が収率良く得られた。2b・C10_4(R=Me)についてX線解析により構造の詳細を明らかにした。本化合物は2つのCR^※Irユニット間を3つのアミド配位子が互いにほぼ120°の間隔で架橋した二核構造を有し、Ir原子間に結合的相互作用は存在しない(Ir-Ir,3.08(1)Å)。対アニオンと2つのアミド水素とが水素結合を形成した結果、2つのCp^※Irユニット間を3つのアミド配位子上のトリル基の配向が非対称となっている。一方、1を1,8-ジアミノナフタレンより調製したリチウムアミド(LiNH)_2C_<10>H_6(1当量)と反応させると、[CP^※M{(U_2-NH)_2C_<10>H_6}(U_2-cl)MCP^※]Cl(3a,M=Rh;3b,M=Ir)が良好な収率で得られた。さらに3をナトリウムアマルガムで還元すると、対応する二核Rh(II)およびIr(II)錯体Cp^※M{(μ_2NH)_2C_<10>H_6}MCP^※(4a,M=Rh;4b,M=Ir)が定量的に生成した。4bについてX線解析を行った。Ir_2N_2コアはバタフライ構造を成し2つのCp^※基は互いにシスの配向をとる。同一分子内のIr-Ir間距離(2.584(1)Å)はIr-Ir単結合に相当するが、これは4が反磁性であることと良く対応している。ついで4をCF_3CO_2Hでプロトン化することにより[Cp^※M{(μ_2-NH)_2C_<10>H_6}(μ_2-H)MCp^※][O_2CCF_3](5a,M=Rh;5b,M=Ir)が定量的に得られた。
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