研究概要 |
アンチモン-金属結合をもつ化合物中のアンチモンの価電子分布に関する情報を、^<121>Sbメスバウアー分光法により得て、アンチモン-遷移金属間結合について次の知見を得た。 (1)Ph_3Sb-M(CO)_5(M=Cr,Mo,W)とPh_3Sb-M(CO)_4(M=Fe,Ru)の^<121>SbメスバウアーパラメータはPh_3SbがM(CO)_5またはM(CO)_4断片と結合することにより、Ph_3Sbの電子が金属Mに流れ、その流れ方はCr<Fe,他方でMo<W<Ru≪Feであることを明らかにした。その結果、^<121>Sbメスバウアー異性体シフトはSb^<III>とSb^Vの中間の値を示している。なお、鉄に向かうほど電子が流れ易いことがあきらかになったが、この順は金属MのAllred-Rochowの電気陰性度の増大する順と一致し、さらにSb-M結合距離の減少する順とも一致している。 (2)Rf_2Sb^V(FeCpL_2)(Rf=マーチンリガンド,L_2=(CO)_2,(CO)(PPh_3),dppe)の^<121>Sbメスバウアーパラメータは[Rf_2Sb^<III>]とRf_2SB^VX(X=Tol,Cl,Br)の値の中間であった。これからFeCpL_2断片はアンチモン(V)に通常の配位子Xより、かなり大きな電子供与をしていることが明らかである。 このようにアンチモンの電子状態が結合する金属や金属断片の種類に強く影響されていることが^<121>Sbメスバウアー分光法により有効に研究されることがわかった。
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