研究概要 |
本研究を遂行するために、下記に示した2つのテーマについて検討を行った。 (1)ヒドロシリルスタンナン(HR_2SiSnR_3)の構造と高い反応性の関連性の解明:結晶性のヒドロシリルスタンナン(1:HMe_2SiSnPh_3;収率:51%;mp90-91℃)及びシリルスタンナン(2:Me_3SiSnPh_3;収率:56%;mp130-131℃)の合成を行い、X線結晶構造解析を用いて、Si-Sn結合長の比較を試みた。いずれの化合物もX線を吸収して分解したので、目的とするデータを得ることはできなかった。他のシリルス夕ンナン類を合成したが、結晶性はなかった(HMes_2SiSnMe_3;収率:41%;bp60-90℃/1.0mmHg;MeMes_2SiSnMe_3;収率:50%;bp60-150℃/1.2mmHg;Mes=2,4,6-トリメチルフェニル基)。 (2)有機ハロゲン化物や不飽和化合物との反応性の検討及び有機合成中間体としての応用性の探索 (a)ハロゲン化物のシリル化反応及び還元反応:パラジウム触媒(PdCl_2(PPh_3)_2)存在下のヒドロシリルスタンナンと有機ハロゲン化物の反応ではベンゼン溶媒のときはシリル化反応が良好に進行し、一方、DMSO溶媒を用いたときは還元反応が優先的に進行した。シリル化反応の条件:ベンゼン溶媒中80℃の条件下、2-6時間で反応が進行した。適用範囲:芳香族ヨウ化物(収率:5-100%)、ビニルヨウ化物(収率:30-60%)、ビニル臭化物(収率:30-40%)アセチレンヨウ化物(収率:30-40%)、環状ビニルヨウ化物(収率:22-63%)。還元反応の条件:DMSO溶媒中80℃の条件下、2-6時間で反応が進行した。適用範囲:芳香族ヨウ化物(収率:40-100%)、ビニルヨウ化物(収率:90%)、環状ビニルヨウ化物(収率:40%)。 (b)共役ジエン化合物のシリルスタンニル化反応:パラジウム触媒(PdCl_2(PPh_3)_2)存在下、室温で頭一頭2量化シリルスタンニル化反応が進行した。適用範囲:イソプレンとHMe_2SiSnBu_3の付加体(収率:35%)、イソプレンとHMePhSiSnMe_3の付加体(収率:47%)、ブタジエンとHMe_2SiSnBu_3の付加体(収率:36%)、ブタジエンとHPh_2SiSnMe_3の付加体(収率:40%)。 (c)ハロゲン化物のスズ化反応:ヒドロシリルスタンナンはt-BuLiよって対応するスズリチウム化合物へ良好に変化し、種々の有機ハロゲン化物と反応した(有機スズ化合物の収率:40-90%)。
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