研究概要 |
好アルカリ性バシラス属細菌41M-1株が生産するキシラナーゼは、反応の至適をアルカリ性領域に有する.本酵素の触媒ドメインはN末端側に位置しており,そのC末端側には機能未知領域が連結している.本重点領域研究では,本酵素のアルカリ性条件における基質認識ならびに触媒反応機構を分子レベルで解明することを目的とする.平成9年度は,本酵素のC末端領域の機能解明と,基質認識ならびに触媒活性に関与するアミノ酸残基の特性を試みた. 41M-1株キシラナーゼのC末端機能未知領域を欠失した変異型酵素△JCも活性を保持しており,本酵素のC末端領域は活性発現に必須ではないことがわかった.次に,C末端領域をグルタチオンSートランスフェラーゼに融合したキメラタンパク質GST-JC1を調製した.GST-JC1は不溶性キシランへの結合能を有しており,本酵素のC末端領域はキシラン結合ドメインであると考えられた.不溶性キシランの加水分解反応において,野生型酵素は△JCよりも数倍高い活性を示した.これより,本酵素のキシラン結合ドメインは,不溶性キシランに特異的に結合し,連結している触媒ドメインによる加水分解反応を促進する機能があると考えられた. 41M-1株キシラナーゼの触媒活性に関与するアミノ酸残基を特定する目的で,その触媒ドメインにアミノ酸置換を施した変異型酵素を種々調製し,野生型酵素との活性比較を行った.その結果,E93,E183,W18,W86,Y84およびY95にアミノ酸置換を施した変異型酵素において,キシラナーゼ活性の大幅な低下が認められ,これらのアミノ酸残基の活性への関与が示唆された.E93およびE183が触媒残基として,そしてW18,W86,Y84およびY95は基質キシランとの結合に関与しているものと推察した.
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