研究概要 |
(1)SCDaseの縮合反応を利用した糖脂質の脂質部分の改変 糖脂質の脂肪酸部分は不均一性を示す。そこで、SCDaseを用いて糖脂質から脂肪酸を切り離した後、縮合反応を用いて目的の脂肪酸分子種を導入し、脂肪酸分子種をそろえた一連の糖脂質の調製を試みた。リゾGM1やGalSphにC6:0からC24:0の飽和脂肪酸を導入することが可能であるばかりでなく、C18:1,C18:2,C18:3等の不飽和脂肪酸も飽和脂肪酸とほぼ同じ効率で導入できることが確認された。さらに、機能性高度不飽和脂肪酸であるDHAやEPAをGalSphに導入した天然には存在しない糖脂質の酵素合成にも成功した。 (2)SCDaseの縮合反応を利用した糖脂質の脂質部分の標識 SCDaseの逆反応を用いて、RI標識脂肪酸を導入した種々の糖脂質やスフィンゴミエリン及びセラミドを高収率で作製する方法を確立した。これらの標識糖脂質や標識セラミドは細胞内での代謝やトランスポートを調べる実験に役立つばかりでなく、TLCとイメージングアナライザーを併用することでスフィンゴ脂質の分解、合成、修飾酵素の高感度測定に用いることができる。実際に、本法を用いてアトピー性皮膚炎の増悪因子と考えられる細菌由来のセラミダーゼを見い出すことができた。この細菌由来のセラミダーゼは、SCDaseとは異なり糖脂質には全く作用しない。セラミダーゼが哺乳動物に存在することは20年も前から知られていたが、微生物に見い出されたのは今回が初めてである。RI標識脂肪酸の代わりに蛍光脂肪酸を用いると蛍光標識糖脂質を作成することができた。この基質はRI基質と異なり特別な施設や機器がなくとも高感度な検出が可能である。
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