研究概要 |
糖アミノ酸の合成、ペプチド鎖の伸長、シアル酸の転移反応から成るムチン型糖ペプチドの新規合成戦略の開発を目指し、様々な検討を行った。特に、その一環として、鍵化合物であるN-保護セリン誘導体の合成に着目し、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミンを構成糖とする2糖性セリンまたはスレオニンの合成を展開した。 トリアセチルガラクタールを出発物質にフッ化2-アジド-3,4,6-トリアセチルガラクトピラノシルを経由し、2糖合成用グリコシル受容体となる3位が遊離の誘導体を調整した。一方で、チオガラクトピラノシドを糖供与体として設計合成し、そのグリコシル化反応を行ったが、収率は35%と満足できるものではなかった。本グリコシル化については後述する改良法など種々の組み合わせを引き続き検討したい。 グリコシル化反応は本研究に限らず、未だ汎用技術として使用できる方法はほとんど知られていないのが現状である。そこで、その改良法の開発は緊急かつ重要な課題である。本研究では前述の2糖合成を念頭に種々検討したところ、従来のグリコシル化反応の様々な経験から、三フッ化ホウ素の添加がグリコシル化反応を著しく加速することを突き止めた。三フッ化ホウ素は触媒量で有効で、今後実際の2糖合成への展開が期待できる。 また、単糖性のムチン型糖ペプチドの固相合成にも併せて成功しており、本研究で得られた知見は、今後の2糖性の糖アミノ酸、糖ペプチドの固相合成に有効に反映できるものと思われる。
|