研究概要 |
Al-Pd-Mn正二十面体相の準結晶--準結晶相変態のメカニズムの解明であるが,Al_<71>Pd_<21>Mn_8付近の組成において,F型,F2型とF2M型の3種類の準結晶関連構造が報告され,F2M型にも注目して研究する。F型は800℃付近で安定で,6次元超立方格子が面心対称なのでF型正二十面体相と呼ばれている。F2型はF型の6次元格子定数がさらに2倍の6次元ダイヤモンド格子の正二十面体相として理解できる。我々が中間相とした回折対称性が不明なF2M型構造の特徴とF2・F2M型の形成条件を明らかにし,準結晶の構造安定性に対する知見も得る。 F2M型構造の特徴 正二十面体対称の5回軸が失われ,2回軸と3回軸のみ保持された回折対称性の低下と3回軸に沿って固有の衛星反射の存在を確認した。 F2・F2M型の形成条件 第1段階の803〜806℃で50時間焼鈍した後,2〜300℃/hで第2段階焼鈍温度へ冷却して調べた。“(1)"第2焼鈍温度・時間を602℃・100hとし,第1から第2段階への冷却が200℃/hより速いとF2型,遅いとF2M型ができた。“(2)"200℃/hで冷却し焼鈍せず,728℃以上からの焼入れでF型,676℃以下でF2型ができた。第2焼鈍温度・時間が708〜728℃・5〜282hではF2型になった。“(3)"200℃/hで冷却し,第2焼鈍温度・時間を739℃・41hとするとF2M型ができた。 この結果はF2M型が真の低温相説を支持していると思われる。F型からF2型への変態は1h以下と短時間なのに,F2M型の形成には740〜760℃の狭い温度領域で数時間の焼鈍が必要なので,F型からF2M型への変態は,まずF2型ができ,その後F2M型へと2段階であると考えられる。F2M型は低温側で正二十面体対称性は壊れているが,準周期性は保持した構造で,X線回折研究を行うため,mm角大の試料作成に取り組んでいる。
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